一ノ関から大船渡線で気仙沼へ。電車で約1時間半の道中、ひょんなことから向かいに座っていた仙台から来たという女性とお話。元々、気仙沼で幼稚園の園長を務めていたSさん。震災時は病院や警察で働いていたたくさんの卒園生たちに助けられ、園の先生たちも園児たちもみな無事に避難することが出来たし、2週間の避難生活をサポートしてくれたと話してくれた。園は被災し一時は再建も考えたものの、園児たちは各地へと避難し再建するにも数年かかることもあり閉園。
「震災前はね、手芸も大好きで色々なものを作ったのよ。でも一生懸命作ったパッチワークも全部流されてしまって、今もまだ何も作る気力がないの」
それでも手芸やお花の先生たちとは今もつながりがあるらしい。
「趣味はなくなっちゃったけど、人と話すのは好きでね、昨日もちょうどお花の先生が来てね」
穏やかな笑みを浮かべて話すSさん。震災のこと、親になった教え子たちやその子どもたちの震災体験、かつて夢中になった手芸の話など話は尽きず、気付くと気仙沼駅に着いていた。今日は気仙沼にいる友人に会いに行くのだそう。
「いつもは長い1時間半だけど、今日はとっても楽しかったわ。一期一会って本当に素敵」
場所柄、あの日が人生の大きなターニングポイントになった人が大勢いる。自身の体験を話せるようになるまで数年かかった人、いまだに話せない人もたくさんいるそうだ。Sさんの体験談はまさに一期一会だからこそ聴けた話かもしれない。こちらこそ素敵な時間をありがとうございました。