三陸応援紀行:震災語り部

陸前高田市で震災語り部をしている釘子明さん。釘子さんの語り部はただ体験を語るのではなく、震災時にどのように避難所を運営したのか、メリットや改善点、今後の課題など、「避難所」に焦点を当てた語りをしているのが特徴だ。そのため企業や団体からの依頼により全国各地で講演会を行なっている。また熊本・大分地震の際もアドバイザーとして現地をサポートしてきた。

釘子さんとの出会いは震災後初めて陸前高田を訪れた際、かさ上げ地に囲まれた中で「語り部くぎこ屋」と書かれたプレハブ小屋を見つけ飛び込んだこと。それをきっかけに以来、釘子さんの語り部講演会に参加したり、陸前高田を訪れる際に必ずお会いして復興の様子を聞かせていただいたり、釘子さんが釣った鮎料理イベントにお声がけいただいたりとお付き合いが続いている。

釣りが大好きな釘子さん、昨年はご自身が気仙川で釣った鮎を「釘子シェフ」として自ら料理し振る舞うというイベントを東京赤坂で開催した。珍しい鮎料理が並び、集った人が料理を通して語り合いつながっていく素晴らしい企画だった。また語り部講演会での「避難所がどこか知っているか。その避難所に何が備蓄されているか知っているか。その避難所はそもそも安全なのか」という釘子さんの問いかけに衝撃を受け、非常に考えさせられたことを今でも鮮明に覚えている。

つい最近、自宅を再建し仮設住宅から引っ越しを終えた。新しい木の匂いに包まれた新居に語り部事務所を移して今後も活動を続けていく。釘子邸からはかつて自宅があった場所もかさあげ工事が進む広大な町の中心部も仮設住宅も見える。

「偶然この場所に家を建てることになった。町の変化を見守りながらこれからも語り続けていけ、ということなのかなと思っている」

釘子さんは語り部の他、陸前高田をどうやって盛り上げて行くか、街づくりはどうあるべきかを考えながら日々活動している。陸前高田はりんごやお茶、ホタテなど地産しているものが多くあり、それで何かできないかと話し合っているそうだ。実際に近々、他県の若者たちがNPO法人を立ち上げ陸前高田産のリンゴを育て周知していく活動を始めるとのこと。

「語り部活動で知り合った学生たちが種になってやっと芽を出してきた。花を咲かせてくれれば」

災害はいつやってくるか分からない。災害が起きると被害の大きさばかりに焦点が当てられるが、そこで暮らす人々にとってその後の街づくりも非常に重要な課題だ。最近の講演では避難所運営の他、街づくりについても意見を交わしているとのこと。

「被災した町として防災に強い町にしなければならない。それは陸前高田だからこそ率先して取り組まなければならない」

釘子さんはこれからも精力的に防災そして災害に強い街づくりを各地で語り続けていくだろう。


語り部 くぎこ屋
HP:http://kataribe-kugikoya.com
FB:https://www.facebook.com/rikuzentakatahisaitikataribekugikoya/

三陸応援紀行:広田半島

漂流ポストなるものがあると聞き、広田半島へ。途中から道を外れ砂利の敷いてある森の小径を進むがカーブが多く先が見えない。「果たしてここでいいのか?」と少々不安になりつつ進むと急に森が開け、木の妖精が遊ぶ素敵なカフェが現れた。

オーナーの赤川さんは横浜市出身。田舎暮らしをしたいとセカウンドハウスとしてここに家を建てたが、訪れる友人たちに「こんなにいい場所なのだからみんなに開放したら?」と提案され、2010年に「ガーデンカフェ 森の小舎」をオープン。頻繁に来るお客さんはいないからと珍しいスイーツを取り寄せて提供しているそうだ。今回訪れた時には北海道の十和田湖近くの農場で作られているゴム風船に入ったプリンを出してくれた。プリンというよりも濃厚ミルク味のレアチーズケーキ、そのまま食べても充分に楽しめるプリンだった。

ところで漂流ポストだが、震災で家族を失った友人が少しでも心の整理ができるようにと天国にいる家族に手紙を書いてもらったことがきっかけだったそう。当初は被災された方たちが書いた手紙が多かったが、最近は全国各地から手紙が届くそうだ。それらの手紙は近くのお寺で供養され、きちんとファイルされて漂流ポスト専用の小屋で読むことができる。その数もすでに数百となりファイル5冊分になっていた。ファイルを開くと伝えられなかった思いや「会いたい」「声が聞きたい」などたくさんの思いが綴られていた。胸に響くものがあり、視界が曇って途中から読めなくなってしまった。テーブルには手作りの押し花ハガキと切手のセットがあり、「親しい方へのお便りにお使いください」とあった。伝えたい思いを伝えられるようにとの気遣いだろう。

赤川さんは自分から漂流ポストの話をしない。「自分からやっていますよ、と話すものでもないしね」と微笑む。

敷地内は車の音も聞こえず、ただただ鳥のさえずりが響き風に揺れる葉ずれの音が聞こえるだけの完全に外と切り離されている空間だ。敷地内には赤川さん手作りの木の妖精があちこちにあり、岬で拾ったという丸い石に顔が描いてあり、長靴や南部鉄器に花がこぼれる。実はこれらに花を植えたのではなく、自然と植物がついたそうで「あるがまま」を楽しんでいるとのこと。ここを訪れる人も手紙を書いた人も空の向こうで受け取る人にも、心に優しい風が吹く。そんな温もりに溢れる癒しの場所。地元の人よりも都会に住んでいる人の来訪が多いというのもうなずける。


[手紙の宛先]
〒029-2208 岩手県陸前高田市広田町赤坂角地159-2

[カフェ]
・予約するのがベター(電話:0192-56-3054)
・入館料800円(お茶、スイーツ付き)
・ブログ:http://ameblo.jp/hirota-morinokoya/